進化学・夏の学校 Summer School on Evolutionary Studies


日時 Date 企画 Organizer 夏の学校タイトル Titles of Summer School
企画要旨 Abstract

 講演者 Speakers タイトル Titles


8月23日
9:00-11:30
成瀬 清メダカの生物学‐発生、遺伝、進化から環境科学まで‐
明治期以来の伝統を持つメダカ研究は、2000年前後から展開された突然変異体の大規模な収集やメダカゲノムプロジェクト等によって新たな段階に達した。今回の夏の学校では今までに蓄積させてきたメダカ生物遺伝資源をもちいて、どのような研究を新たに展開できるのについて、様々な背景をもつ5人の講師の方とともに考えてみたい。

  田中 実 誰でも性は変わりうる?〜性分化に影響を与える生殖細胞

 

木下 政人、井上 広滋

メダカ属魚類を用いたアジアの環境モニタリングの試み

  新屋 みのり メダカの量的形質とその遺伝学的解析

  菊池 潔 フグとメダカの比較から見える魚類ゲノムの進化


8月24日
9:00-11:30
河田 雅圭地球環境変化と進化学
地球温暖化などの急激な地球環境変化は生態系に直接影響をおよぼすだけでなく、生物の進化的な変化を引き起こすことが予想される。地球温暖化による生態系の影響を考える上で生物進化が重要であることがすでに指摘されている。講義では、今後確実に生じる地球環境変化への対応において進化学が果たす役割について考察する。

  鈴木 紀毅I. 過去の地球環境変化と進化
温暖期地球の生物はどうなったか?ー地球史から温暖化世界をみるー

 河田 雅圭II. 現在から未来への影響
地球温暖化による生物進化と生物多様性の変化


8月24日
13:00-15:00
田村 浩一郎MEGA4による分子系統解析
MEGA4はDNA塩基配列、タンパク質アミノ酸配列データを分子系統解析するためのWindowsパソコン上で動作するコンピュータプログラムです。配列データの準備、多重アライメント、系統樹推定など、系統解析に必要な機能を一通り備えています。この夏の学校では、開発者自身によってMEGA4による分子系統解析を実演・解説します。初心者には基本的な使い方を、使用経験のある中級者には正しい使い方を、パワーユーザにはあまり知られていない裏技を披露したいと思っています。後半は参加者からの質疑応答やMEGAの将来についての議論など、インタラクティブな形式で進めたいと思っています。


8月24日
15:15-17:15
矢原 徹一植物の生態学
全世界には、25万種の陸上植物が記載されています。この数字は、昆虫(75万種)に次ぐ値です。昆虫の多くは、特定の陸上植物を食草として利用します。したがって、陸上の生態系の多様性は、陸上植物によって支えられていると言っても過言ではないでしょう。では、植物はなぜこんなにも多様なのでしょうか?昆虫がさまざまな植物に適応することによって多様化しているのに対して、陸上植物が利用する資源(光・水・栄養素)は共通性が高く、これらの資源を利用する方法の多様性だけでは、25万種もの種多様性はとても説明できません。陸上植物に見られるめざましい多様性を説明するために、たくさんの仮説が提唱されてきました。主要なものをあげると、以下のとおりです。(1)ニッチ分化説:微地形などに適応して多様化した。(2)中規模かく乱説:中程度のかく乱が種の多様性を高める。(3)ジャンセン・コンネル説:天敵や病原体によって優勢な種が不利になる。(4)中立説:中立的な種分化、移住、絶滅のバランスの下で多様性が保たれる。どの仮説にもそれを支持する証拠があるので、植物多様性の進化と維持には複数の要因が関わっていると見るべきでしょう。では、どの要因がどの程度重要なのでしょうか。この問に答えるためには、系統樹の情報が必要です。「種多様性の維持機構」という植物生態学の基本問題は、実は進化生物学の問題にほかならないことを説明します。そのうえで、どの要因がどの程度重要かについて、私の研究成果を紹介します。

     


(注)進化学・夏の学校は日本語で講演を行います。高校生や一般の方の参加も歓迎します。
(Note) Language spoken in the presentations is Japanese.