日本進化学会
第12回 東京大会

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2010年8月2日〜5日 於 東京工業大学 大岡山キャンパス

ワークショップ

14セッションのワークショップを開催します。聴講する方は参加登録が必要です。
会場: D会場 (デジタル多目的ホール)



【8月3日】

WS1

8月3日
9:00-12:00
企画タイトル 『性(せい)か雌(し)か・・・それが問題だ! 〜有性生殖と無性生殖を行き来する生物から性の進化を考える〜』
企画者 木村 幹子 (東北大学大学院生命科学研究科)
箱山 洋 (中央水産研究所/東京海洋大学)
演題・講演者 「フナ類の有性・無性集団の遺伝子交流」
 箱山 洋 (中央水研/東京海洋大)
「無融合生殖するタンポポが遺伝的多様性を創出するメカニズム」
 保谷 彰彦 (東大院総合文化)
「両性生殖集団と単為生殖集団をもつ昆虫・オオシロカゲロウの繁殖システムと単為生殖集団の起源」
 関根 一希1、林 文男2、東城 幸治3
 (1信州大・院・総合工、2首都大・理・生命、3信州大・理・生物)
「プラナリア有性・無性生殖転換機構の解明に向けて:有性化実験系と幹細胞移植」
 野殿 英恵 (慶大・院理工)
「一代限りで使い捨てられる父親ゲノム:アイナメ属の雑種で見られた半クローン生殖の進化的意義」
 木村 幹子 (東北大・院・生命科学)
コメンテーター 江副 日出夫 (大阪府立大学大学院理学系研究科)
企画要旨
 生物の生殖様式は、大きく有性生殖と無性生殖に分けられ、前者は雄と雌の2種類の細胞の接合により新たな遺伝子の組み合わせを持つ子孫を作るのに対し、後者は遺伝的組み換えなしにクローンの子孫を作る。多くの生物は有性生殖を行っているが、中には同じ種の中に有性生殖を行うものと無性生殖を行うものが混在している場合や、同じ個体が状況によって2つの生殖様式を切り替えている場合もある。1個体を作るのに2個体必要な有性生殖に比べ、無性生殖は2倍の増殖力がある。しかし無性生殖では、遺伝情報の交換がないため遺伝的多様性が創出されず、環境の変化に対して脆弱であるとも言われている。本集会では、まず理論的見地から有性生殖と無性生殖の利点、欠点について整理し、2つの生殖様式が混在しているいくつかの系について、その存在・存続に関して、進化的な側面から考察してみたい。

WS2

8月3日
9:00-12:00
企画タイトル 『利己者と利他者の絶滅回避をめぐる適応動態』
企画者 吉村 仁 (静岡大学)
演題・講演者 「みんな疲れるので、働かないアリがいる非効率的なシステムはより長く続く」
 長谷川 英祐、小林 和也、石井 康規、多田 紘一郎
  (北大院・農・生物生態体系)
「アミメアリにおける裏切り系統の長期存続:他コロニーへの侵入戦略」
 土畑 重人 (琉球大・農)
「生物における共生進化のダイナミクス」
 吉村 仁1、成相 有紀子2 (1静大・創造院、2静大・院工)
「共生系個体群動態の基本モデル」
 泰中 啓一、小林 和幸、比嘉 慎一郎 (静岡大)
企画要旨
 適応度が未来の値であることに着目し、近未来での増殖率が高い利己者(圧倒者:現在の瞬間において相対適応度が高いタイプ)と遠い未来において絶滅する確率の低い利他者(持続者:現在の瞬間において相対適応度が低いタイプ)の間の競争ダイナミクスについて、理論・モデル・実証の各側面から、議論する。特に、単一の定常個体群を前提とした従来の議論では進化し得ない後者のタイプが、群構造、環境変動、共進化などの、実在の生物で頻繁に観察される条件下では維持されることを示し、生物進化における長期的適応度の重要性を議論する。

WS3

8月3日
13:00-16:00
企画タイトル 『生態適応と形質分化』
企画者 小沼 順二 (京都大学大学院理学研究科)
山本 哲史 (京都大学大学院理学研究科)
演題・講演者 「好き嫌いで生じるテントウムシの適応放散」
 松林 圭1、Sih Kahono2、片倉 晴雄3
 (1北大・院環境、2LIPI、3北大・院理)
「生態的種分化はAdaptive Dynamics理論で:生態的形質が進化的に分岐する条件と複数形質への拡張について」
 伊藤 洋1、Ulf Dieckmann2
 (1国環研・環境リスク、2IIASA・EEP)
「ヤマハッカ属(シソ科)における送粉者相に応じた形態的・遺伝的分化」
 堂囿 いくみ1、牧 雅之2、鈴木 和雄3
 (1神戸大・人間発達環境、2東北大・生命科学、3徳島大)
「クロテンフユシャクの初冬型と晩冬型の進化」
 山本 哲史1、E. A. Beljaev2、曽田 貞滋
 (1京大・院理、2ロシア科学アカデミー)
「昆虫の求愛音・擬死音の変異とその遺伝的基盤:量的遺伝学的アプローチによる解明」
 立田 晴記 (琉球大・農)
「適応進化した東アフリカ湖産シクリッドの形態」
 藤村 衡至1,2、岡田 典弘2、Thomas D. Kocher1
 (1アメリカ・メリーランド大、2東工大・院生命理工)
コメンテーター 奥山雄大 (国立科学博物館)
企画要旨
 生物の外部環境への適応は集団間における表現型の著しい差異をもたらす。そのような生態形質の分化機構の解明は、進化生態学における従来からの中心テーマであるが、2000年以降Adaptive Dynamics理論の台頭により、この分野における理論的研究が大きく発展した。実証研究においても、分子系統学、量的遺伝学、発生学的手法が発展し、これらのアプローチによって自然選択の証拠や、形質進化の背景にある遺伝学的、発生学的メカニズムの解明が著しく進展してきた。本ワークショップでは、これらの適応分化機構に関わる研究を紹介し、生物多様性の創発に生態適応がいかに機能しているかについて議論したい。

WS4

8月3日
13:00-16:00
企画タイトル 『メタゲノム/メタトランスクリプトームが明らかにする生物多様化メカニズム』
企画者 池尾 一穂 (国立遺伝学研究所)
小倉 淳 (お茶の水女子大学)
演題・講演者 「メタゲノム・メタトランスクリプトームの現在と未来」
 池尾 一穂 (国立遺伝学研究所)
「次世代シークエンサーを用いたヒト腸内細菌叢メタゲノミクス」
 服部 正平、大島 健志朗、金 錫元 (東大・新領域)
「メタゲノム解析により明らかになった微生物の芳香環分解遺伝子の環境適応戦略」
 末永 光、宮崎 健太郎 (産総研・生物プロセス)
「海産浮遊性プランクトンの次世代シーケンス網羅解析による生物多様性比較」
 長井 敏、西谷 豪、野口 大毅2、阿部 和雄3
 (1水研セ瀬水研、2日本総合科学、3水研セ西水研)
「比較トランスクリプトーム解析に向けたマイクロアレイ設計の提案」
 瀬々 潤 (お茶大・理・情報)
「比較トランスクリプトーム解析によるタンパク質間相互作用ネットワークの機能モジュールの大域的構造および進化プロセス」
 荻島 創一 (東京医歯大・難研)
「イネの次世代シーケンシングから見る多様性」
 伊藤 剛、川原 善浩、田中 剛、坂井 寛章、脇本 泰暢、松本 隆
 (農業生物資源研・基盤)
「比較トランスクリプトームによる軟体動物の眼の多様化プロセス解析」
 小倉 淳 (お茶大・アカデミックプロダクション)
「チンパンジー親子トリオトランスクリプトーム解析による遺伝子発現制御機構の解明」
 郷 康広1、西村 理2、豊田 敦3、藤山 秋佐夫3,4、阿形 清和2
 (1京大・霊長研、2京大・院理、3遺伝研、4情報研)
企画要旨
 次世代シーケンサやマイクロアレイの発達により、さまざまな生物の全ゲノム塩基配列やこれまで考えられなかった環境中・多種生物叢におけるメタゲノムといった、大規模データが簡単に手に入るようになり、進化におけるゲノムの動態や生物多様性の分子基盤への我々の理解は急速に進んできている。この大規模データ時代において、仮説ドリブンの研究からデータドリブンの研究が多くなっているが、ここで今一度、さまざまな生物学的興味・仮説を背景にした大規模データ時代の生物多様性に関する進化研究に焦点をおいた研究会を開催する。本研究会では、メタゲノムのみならず、環境中や生物種間での動的な遺伝子発現からなるメタトランスクリプトームの視点から生物多様化メカニズムの解明にどのようなアプローチがとりうるか議論する。

WS5

8月3日
16:30-19:30
企画タイトル 『統計的方法論の最前線』
企画者 下平 英寿 (東京工業大学 情報理工学研究科)
演題・講演者 「葉緑体ゲノムデータによる分子系統樹解析に潜むいくつかの問題点」
 長谷川 政美、Bojian Zhong, 米澤 隆弘、Yang Zhong
 (復旦大・生命)
「分子進化のベイズ推定」
 岸野 洋久 (東大・農学生命科学)
「配列進化の統計的モデル 」
 徐 泰健 (東大・農学生命科学)
「集団遺伝の確率モデル」
 間野 修平 (統数研 数理・推論研究系)
「系統樹推定におけるブートストラップ法」
 下平 英寿 (東工大・情報理工)
企画要旨
 進化学は生命科学の研究者だけでなく統計科学の研究者にとってもエキサイティングである.やりがいのある問題の宝庫であり,高度な数理統計理論を受け入れる伝統がある.このワークショップではゲノム・分子配列の統計分析において,進化学の問題意識が新しい統計的方法論を生み出す現場を紹介する.そして相互交流のきっかけになるような議論をしたい.

WS6

8月3日
16:30-19:30
企画タイトル 『ゲノムから見る微生物進化』
企画者 本郷 裕一 (東京工業大学生命理工学研究科)
中鉢 淳 (理化学研究所基幹研究所)
演題・講演者 「アーキアゲノムにおけるtRNA遺伝子の多様性と進化」
 藤島 皓介,菅原 潤一,冨田 勝,金井 昭夫
 (慶大・先端生命研)
「原核生物における蛋白質の翻訳開始機構の進化」
 中川 草1、新村 芳人2、三浦 謹一郎3、五條堀 孝1
 (1遺伝研・生命情報DDBJ、2東医歯大・難治研、3東大・名誉教授)
「宿主昆虫と必須共生細菌のゲノム進化」
 中鉢 淳 (理研・基幹研)
「必須腸内共生細菌の比較ゲノムから見るマルカメムシ類の食物利用の進化」
 二河 成男1、細川 貴弘2、大島 健志朗3、 服部 正平3
  深津 武馬2
 (1放送大・教養、2産総研・ゲノムファクトリー、3東大院・新領域)
「ゲノムから見るシロアリ腸内原生生物細胞内共生細菌の機能と進化」
 本郷 裕一 (東工大院・生命理工)
「複製によって形成されたバクテリアゲノム構造の解析」
 荒川 和晴 (慶大・先端生命)
企画要旨
 DNA配列決定コストの低減により、現在までに1,000系統以上の真正細菌・古細菌のゲノム完全長配列データが蓄積している。また、地球上の大多数の微生物種は難培養性で、ゲノム解析は困難であったが、少数の細胞からゲノム配列を取得する技術開発が進行しており、今後、さらに多様な微生物種のゲノム情報が入手可能となるであろう。本ワークショップでは、ゲノムから見る難培養細菌種の機能と進化、原核生物と真核生物の共生機構の進化、原核生物の翻訳機構・ゲノム複製機構の進化など、ゲノム情報を活用した微生物進化に関わる先端的研究を紹介し、今後の展望などを議論する。




【8月4日】

WS7

8月4日
9:00-12:00
企画タイトル 『全ゲノム配列時代の進化研究』
企画者 三沢 計治 (理化学研究所 次世代計算科学研究開発プログラム)
演題・講演者 「次世代シークエンサーを用いた染色体特化型ゲノム解析」
 黒木 陽子1、西田 有一郎2、近藤 伸二1、新井 理3、江端 俊伸3、小原 雄治3、豊田 敦4、藤山 秋佐夫4,5
 (1理研・基幹研・システム計算生物学G、
  2東北大・医・がんコアセンター・細胞制御、
  3遺伝研・生物遺伝資源情報、
  4遺伝研・比較ゲノム解析、5情報研・情報学)
「マルチローカスデータを用いた進化生態学的研究」
 長田 直樹 (遺伝研・進化遺伝)
「スーパーコンピュータを利用した全ゲノム規模の大量データ解析について」
 三沢 計治 (理研・次世代計算科学研究開発プログラム)
企画要旨
 現在、進化の謎を解くための、比較ゲノム研究が盛んに行われている。最近は、次世代シークエンサの開発やコンピュータの高速化などの技術革新もあり、比較ゲノムの研究が、『種レベル』から『集団・個体レベル』で行われることによって、さらに詳細な進化研究が可能となった。しかし、比較ゲノム研究を進めるためには、大量データの取り扱いや、データ解析法の開発など、様々な問題を解決して行く必要がある。このワークショップでは、全ゲノム規模の比較ゲノム研究の最新の進化研究を紹介する。同時に、全ゲノム規模の比較ゲノムの研究に関する様々な問題について取り上げることで、今後の進化学と比較ゲノム研究の進む方向を議論したい。

WS8

8月4日
9:00-12:00
企画タイトル 『大規模解析から見えてきた遺伝子重複による進化 〜多様性、頑健性、必須性〜』
企画者 花田 耕介 (理化学研究所 植物科学研究センター)
牧野 能士 (東北大学大学院 生命科学研究科)
演題・講演者 「重複遺伝子の冗長性と異機能性」
 花田 耕介 (理研・PSC)
「硬骨魚のオプシン遺伝子郡の遺伝子重複とその適応的役割」
 五條堀 淳 (総研大・葉山)
「脊椎動物嗅覚受容体遺伝子ファミリーの進化 −環境に応じて変化するゲノム−」
 新村 芳人 (東京医科歯科大・難研)
「遺伝子量の増加に対する酵母細胞のロバストネス」
 守屋 央朗 (岡大・異分野コア)
「全ゲノム重複により生じた重複遺伝子の保持機構と疾患との関連」
 牧野 能士1、Aoife McLysaght2
 (1東北大・院生命科学、2Trinity College Dublin)
「遺伝子多重化が表現型に及ぼす効果についてのパスウェイシミュレーションを用いた検討」
 佐藤 行人 (国立遺伝学研究所・集団遺伝研究部門)
「重複遺伝子の進化における遺伝子変換の影響」
 手島 康介 (総研大・学融)
「新規に生じた重複遺伝子の運命に及ぼす有害突然変異の効果」
 田中 健太郎 (総研大・遺伝学専攻)
企画要旨
 真核生物のゲノム上では頻繁に遺伝子重複が起きているが、重複遺伝子が生物進化にどのように貢献しているかは未知の部分が多い。遺伝子重複後に起こる機能分化は明らかに生物進化にかかわる現象であるため、その進化メカニズムを理解することは重要である。一方で、重複遺伝子の冗長性による相同な遺伝子のバックアップ機能も報告されており、理論研究を含めた詳細な検討が必要となってきている。また、生物をシステムとして捉えた時、遺伝子重複による遺伝子量増加がシステムを撹乱する影響も考慮せねばならない。このような背景の中で、重複遺伝子の進化研究を精力的に進めている研究者を招待し、重複遺伝子の理解を深めたい。

WS9

8月4日
13:00-16:00
企画タイトル 『ヒトはなぜ病気になるのか〜進化学の目で見る新たなアプローチ』
企画者 太田 博樹 (北里大学 医学部)
演題・講演者 「病気はなぜあるのかー進化生物学からの視点」
 長谷川 眞理子 (総研大・教授)
「低頻度有害変異と疾患遺伝子関連研究」
 大橋 順 (筑波大・院人間総合科学研究科)
「クローン病アレルの地域特異性とその進化学的考察」
 中込 滋樹 (北里大学・医)
「ウイルスとヒトの進化」
 間野 修平1,杉山 真也2,田中 靖人3,溝上 雅史2
 (1統数研,2国立国際医療研究センター,3名市大・医)
「統合失調症の原因を進化学的手法で探る」
 柴田 弘紀 (九大・生医研)
企画要旨
 最近、ヒトのゲノム多様性の研究が急速に進み疾患リスクを示す数多くの一塩基多型(SNP)あるいはコピー数多型(CNV)などが見つかってきている。何故ヒトはそんなにも多くの「危ない」多型をゲノムに内包しているのだろうか?現生人類は約10万年前アフリカから拡散(Out-of-Africa)した新種である。メンデル遺伝をする疾患の場合、そのリスク・アレルは、ヒトの歴史の中で見ると、ごく最近生じたと考えられる一方、多因子疾患のリスク・アレルは、長い間かけて蓄積されてきたアレルの1つであると考えられる。本ワークショップでは、こうしたヒトの進化に立場から、遺伝性を示す疾患のメカニズム解明に取り組む研究者が話題を提供し「進化学の目で見る新たなアプローチ」について議論する。

WS10

8月4日
13:00-16:00
企画タイトル 『ゲノム進化学の新展開』
企画者 鈴木 善幸 (国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センター)
演題・講演者 「ゲノム進化学の新展開」
 鈴木 善幸 (遺伝研・生情)
「脊椎動物ゲノム重複遺伝子解析で発見された起源が古いcis-elementの機能と進化」
 隅山 健太 (遺伝研・集団遺伝)
「イネ属近縁種の比較ゲノム進化解析」
 伊藤 剛、坂井 寛章、楊 靜佳、松本 隆
 (農業生物資源研・基盤)
「植物オルガネラにおけるRNAエディティング:タンパク質立体構造との関係とエディティング部位の予測」
 由良 敬1,2、郷 通子3,4,5
 (1お茶大・院理、2お茶大・生命情報セ、3情報・システム機構、
  4長浜バイオ大、5東京医科歯科大)
「モウコノウマの遺伝的多様性と分子系統解析」
 後藤 大輝 (ペンシルバニア州立大)
「哺乳類誕生以前のカゼイン遺伝子の進化:カルシウムを多く含むミルクの起源」
 川崎 和彦 (ペンシルバニア州立大)
企画要旨
 シークエンシング技術の進歩によるゲノムデータの蓄積により、集団遺伝学における種内の多型や分子進化学における種間の相違の研究を、ゲノム全体を対象として行うことが当たり前になった。また、蛋白質間相互作用ネットワーク、遺伝子発現プロファイル、RNAエディティング、さらにはエピゲノミクスなどに関する大規模データも蓄積されてきており、これらを組み合わせた解析により新たな進化学的知見が得られてきている。本ワークショップにおいては、このようなゲノム進化学の発展により明らかになってきた最新の知見を、集団遺伝学や分子進化学などの分野の最前線で活躍されておられる日米の研究者にお話しいただき、今後の展望を議論する。




【8月5日】

WS11

8月5日
9:00-12:00
企画タイトル 『生命の起原と初期進化:地質学、地球化学、生化学、分子進化学からのアプローチ』
企画者 山岸 明彦 (東京薬科大学・生命科学部)
木賀 大介 (東京工業大学・総合理工学研究科)
演題・講演者 「宇宙での円偏光と鏡像異性体の起源」
 田村 元秀1,2、福江 翼1、神鳥 亮1 (1国立天文台、2総研大)
「生命の「種」は宇宙から届けられたのか:準パンスペルミアの検証」
 小林 憲正 (横浜国大・院工)
「自律的に成長・分裂する脂質膜」
 豊田 太郎 (東大・院・総合文化)
「核酸塩基の起源−人工塩基対の創出」
 平尾 一郎 (理化学研究所・生命分子システム基盤研究領域)
「遺伝暗号の起源と初期進化を考察するための改変遺伝暗号の構築」
 網蔵和晃、小林晃大、木賀大介 (東工大・院総理)
「生命の起原と初期進化:遺伝情報から何がわかるか」
 山岸 明彦 (東薬大・生命)
企画要旨
 生命の起原の研究が実験化学の対象となってから50年以上になる。生命の起原と初期進化の研究には、地質学、地球化学、生化学、分子生物学など多くの分野の研究が関連し、近年急速に進んでいる。例えば、多様な生物の遺伝情報の蓄積、化石の発見、天文学的知見の蓄積といった解析的(トップダウン)アプローチは、生命の初期段階の証拠を与えている。一方、ミラーの実験に始まる「つくる」ことによる構成的な(ボトムアップな)アプローチも、知見の蓄積と生体関連物質の合成手段の発達により、生命の諸階層へと広がりを見せている。本WSでは、これら幅広い研究分野の研究者をあつめ、それぞれの研究分野の現状を発表してもらうことにより、生命の起原と初期進化についての現時点での理解を共有することを目指す。

WS12

8月5日
9:00-12:00
企画タイトル 『生態−進化−発生(Eco-Evo-Devo)の階層を結ぶ統合的理解へ
 −生命システムのもつ'やわらかさ'との邂逅』
企画者 鈴木 誉保 (理研・CDB)
金子 邦彦 (東大・総合文化)
演題・講演者 「可塑性と遺伝的同化のゆらぎ理論」
 金子 邦彦 (東大・総合文化)
「遺伝子発現の適応」
 四方 哲也 (阪大・バイオ情報、ERATO・JST)
「節足動物門における体節形成の進化:ビコイド対ヘッジホッグ」
 小田 広樹1,2、金山 真紀1,2、秋山-小田 康子1
 (1JT生命誌研究館、2大阪大学・院理)
「個体の可塑性がもたらす形質淘汰:捕食者‐被食者系で考える」
 岸田 治 (北大・北方生物FSC)
「枯葉に擬態した蛾・蝶の翅模様にみられるグラウンドプランと形態統合」
 鈴木 誉保、倉谷 滋 (理研・CDB・形態進化)
企画要旨
 近年、生態−進化−発生の融合を目論んだ研究領域(Eco-Evo-Devo)が進展しつつある。この異なる時間・空間スケールに生じる現象を理解するためには、階層にまたがったダイナミクスが本質的に重要になる。すなわち、淘汰は発生プログラムを選ぶ一方で発生プログラムは進化の道筋にバイアスを与え、あるいは、環境は個体間の関係に影響を及ぼしつつも個体間の関係はまた環境をも変えうる。そこでは、部分から全体への一方通行の理解だけではなく、全体から部分への作用も含めた双方向からの理解が必要となることは疑いもない。この双方向性こそが、‘複雑な’システムの理解には欠かせないと我々は主張してきた。本ワークショップでは、網羅的解析、定量的計測、新規のモデル動物の構築といった新たな技術を取り入れた実験や、計算機シミュレーション、力学系、統計力学の成果に基づいた理論研究の進展を中心に話題を提供する。

WS13

8月5日
13:00-16:00
企画タイトル 『進化発生学の新たな地平をめざして』
企画者 和田 洋 (筑波大学生命環境科学研究科)
三浦 徹 (北海道大学環境科学院)
演題・講演者 「パラログ形成にともなうシス調節機構の進化」
 荻野 肇、越智 陽城 (奈良先端大・バイオ)
「多細胞動物の体制進化の比較ゲノム学」
 川島 武士 (OIST)
「表現型可塑性に見られる発生生理機構のコオプション」
 三浦 徹 (北大・地球環境)
「進化的キャパシターの探索:候補遺伝子アプローチとゲノムワイドスクリーニング」
 高橋 一男 (岡山大・異分野融合コア)
「酵素活性の変化と生活史の進化:コレステロール代謝酵素Neverlandを例として」
 丹羽 隆介 (筑波大・院生命・若手イニシアティブ)
企画要旨
 生物は進化のプロセスで、多くの新規形質を現出させ、創造的な歴史を展開することで、我々を魅了してきた。このような創造的な歴史の背景を考えていきたい。
 形態進化と遺伝子の進化が1対1で対応するケースは決して一般的ではなく、多くの形質はポリジーンによる影響を受ける一方、逆に遺伝子の多くも多面的な発現をしている。また、集団の変異をマスクして遺伝的変異を蓄積するevolutionary capacitor(進化促進因子)として働く分子も報告されている。さらに,表現型の可塑性が形質進化をリードするという考え方も次第に一般的になりつつある.
 このような遺伝子型と表現型の複雑な関係の中に、創造性をもたらすようなまだ見ぬロジックがあるのではないかとも、考えられる。5人の演者による話題提供の後、会場のオーディエンスと共に模索していきたい。

WS14

8月5日
13:00-16:00
企画タイトル 『Phylogenetic methods and thinking in cultural evolutionary studies』
企画者 中尾 央 (京都大学文学研究科)
三中 信宏 (農業環境技術研究所・東京大学)
演題・講演者 「A brief history of phylogenetic methods in cultural evolutionary studies: An introduction」
 NAKAO Hisashi
 (Department of Philosophy and History of Science, Graduate School of Letters, Kyoto University)
「The roots of cultural phyogenetics and the universal tree-thinking」
 Nobuhiro Minaka
 (National Institute for Agro-Environmental Sciences)
「Using phylogenetic comparative methods to test hypotheses about the pattern and process of human cultural evolution」
 Tom Currie (University of Tokyo, JSPS Post-Doctoral Fellow)
「Phylogenetic approach to "Wakuraba(老葉)" --an anthology of "Renga" by Sohgi--」
 Tamaki YANO
 (Fac.of Culture and Science, Doshisha Univ.)
「Analyzing the development and evolution / origings of potpourri elements of 19th century Japanese Giyofu (pseudo western style) architecture using G. Kubler's」
 中谷 礼仁 (早大・理工学術院)
企画要旨
 As the title shows, this workshop focuses on phylogenetic methods and thinking in cultural evolutionary studies. While evolutionary studies of culture as a systematic research program started in 1970s or 1980s, the main aim of these studies has been to consider not the pattern but mainly the process of cultural evolution. Recently, however, phylogenetic methods and thinking have been a hot topic in cultural evolutionary studies. For example, some useful and interesting anthologies were published (e.g., Lipo et al. 2005; Mace et al. 2005; Shennan 2009) and in fact, we are planning to publish an anthology on this topic that the participants will contribute to. This workshop will consider such phylogenetic methods and thinking in cultural evolutionary studies from many kinds of perspectives.






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Panthera leo (南アフリカ)