[P-004]東アフリカ産カワスズメ科魚類における光受容体タンパク質遺伝子の適応的進化
発表者(所属) 菅原亨1、寺井洋平1、今井啓雄2、七田芳則2、岡田典弘1 (1東京工業大学大学院生命理工学研究科、2京都大学大学院理学研究科) 要旨 東アフリカの三大湖に生息するシクリッドは、爆発的な適応放散の例として知られている。シクリッドの視覚は生息環境への適応に重要な役割を果たしてきたと考えられた。そこで、本研究では光受容体遺伝子のひとつRH1遺伝子の配列を決定し、シクリッドの適応放散に際しての適応的変化を検証した。東アフリカの湖及びその周辺河川に生息しているシクリッドで配列を比較したところ、多くのアミノ酸置換が見られた。また、RH1タンパク質を培養細胞で発現させ波長感受性を調べたところ、湖の深場に生息している3種において、292番目のセリン残基により最大吸収波長が通常のRH1タンパク質に比べ10nm程短波長にシフトしていることがわかった。シクリッドの適応放散においてこの3種は、292番目のアミノ酸残基のセリンへの置換という収斂進化によりRH1タンパク質が短波長シフトし、光量の限られた湖の深場の光環境へ適応したと考えられる。