[P-012]魚類の左右二型の存続と変動についての数理的研究
発表者(所属) 中嶋美冬(東大海洋研・資源解析)、 松田裕之(東大海洋研・資源解析)、 堀道雄(京大・理) 要旨 タンガニイカ湖のシクリッド魚類において、口が右にねじれて開き左側頭部がやや正面を向く「左利き」とその逆の「右利き」という遺伝形質の二型が知られている。遺伝形式は1遺伝子座2対立遺伝子に支配される左利き優性のメンデル遺伝と考えられている。魚食魚では自分と逆の利きの餌個体を主に捕食することが明らかにされている。本研究ではこれを交差捕食(Cross Predation)と呼び、この交差捕食が魚類の左利きと右利きの共存を維持する要因となりうることを、Lotka-Volterra捕食系の応用モデルと利き遺伝子頻度の動態モデルを用いて示した。平衡点の局所安定性解析、大域安定性解析、計算機実験から、どちらのモデルでも捕食者・被食者において右利きと左利きが共存し、各種内の右利き個体頻度の時間変化は0.5の平衡点を中心に周期的な振動を示すことがわかった。これは野外観察で得られたデータの挙動と一致している。