[P-017]深海魚フウセンウナギ類のミトコンドリアゲノムにおける大規模な遺伝子配置変動
発表者(所属) 井上 潤 (東大海洋研) ・宮 正樹 (千葉中央博) ・塚本 勝巳 (東大海洋研) ・西田 睦 (東大海洋研) 要旨 脊椎動物におけるミトコンドリア遺伝子配置の変異は,かつて考えられていたよりも頻繁に生じていることが明らかになってきた.しかしそのほとんどはいくつかの tRNA 遺伝子のみを含む,局所的な変異であった.ミトコンドリアゲノム解析に基づく下位条鰭類の分子系統学的研究を行っていく過程で,われわれは奇妙な形態で知られる深海魚のフウセンウナギ類 2 種においてミトコンドリアゲノム全領域にわたる大規模な変異を発見した.真骨類の主要系統を網羅する 57 種のミトコンドリアゲノムデータをあわせて系統解析を行ったところ,フウセンウナギ類の特異な遺伝子配置は脊椎動物一般で知られる配置に起源していることが明らかになった.これまで条鰭類で報告されている異なる 9 タイプの特異な遺伝子配置は,いずれもある期間に深海域に生息する魚類で知られており,その進化は深海という特殊な環境と密接な関わりを持つと推定される.