[P-022]バイカル/シントウトガリネズミ・グループにおける形態と系統の微妙な関係
発表者(所属) 大舘智氏(北大低温科学研究所)・阿部永(元北大農学部) 要旨 バイカルトガリネズミはユーラシア北部に広く分布し、一方、その姉妹種であるシントウトガリネズミは日本の本土地域の寒冷地に分布している。最近、本土地域と朝鮮半島の中間に位置する済州島において、バイカル/シントウトガリ・グループに属するトガリネズミが発見され、当初、外部形態からシントウトガリに属すると思われた。しかし、その後の分子系統学的研究により済州島のトガリネズミはバイカルトガリに属する事が判明した。これを機に北東アジア周辺のバイカル/シントウトガリ・グループの形態変異を再検討した。すると従来のバイカルとシントウの判別形質は有効でないことが分かった。また済州島のトガリは形態的にシントウトガリに類似しているが、変異を詳査すると必ずしも分子系統の結果とは矛盾しないことが分かった。いずれにせよ、このグループを形態のみで分類することは危険であり、分子系統の知見が必要不可欠であることが示された。