[P-027]うどんこ病菌(植物寄生菌類)の熱帯・亜熱帯地域への適応 −Brasiliomyces属菌を事例として−
発表者(所属) 高松 進1、Sawwanee Kom-un1、Saranya Limkaisang1、Chaiwat To-anun2、佐藤幸生3 (1三重大生資、2チェンマイ大農、3富山県立大) 要旨 Brasiliomyces属は世界の(亜)熱帯地域に隔離分布し、殻壁が一層のみの特異な子のう果を持つうどんこ病菌である。北米カリフォルニアとタイ北部で採集した2種のBrasiliomyces属菌は単系統群を形成しなかった。このことはこれら2種が共通の祖先を持たず、別々に進化した可能性を示唆している。うどんこ病菌の起源地は北半球温帯地域と考えられ、(亜)熱帯地域に分布する菌は温帯地域から移入した菌である。それらの多くは越冬のための有性世代の形成能を失い、無性世代のみで生活史を完結する。一方、ある条件下では、逆に無性世代を省略し、有性世代のみで生活史を完結させるほうがより適応的である場合も想定できる。Brasiliomyces属菌はその一例であり、うどんこ病菌がそれぞれの地域に適応して別々に同様な方向への進化をした結果生まれた属なのではないか。本講演ではBrasiliomyces属の成り立ちについての一つの仮説を述べる。