[P-032]雌雄の利害の対立による急速な形態進化:ババヤスデ属の交尾器
発表者(所属) 田辺 力(徳島県立博物館)・曽田貞滋(京都大学理学部) 要旨 多数回交尾する動物では雄交尾器は交尾率を高めるように進化し雌交尾器は雄からの過剰な交尾要求を制御するように進化すると考えられる。ババヤスデ属では雄はハサミ状の交尾器で雌交尾器のバルブ(精包の受口)をつかみ精包を渡す。雌はバルブにつながるジャバラ構造によりバルブを体内に引っ込めることができ、これにより交尾の拒否や中断ができると思われる。交尾器形態をクレードで比較すると多様性(集団間変異)の大きいクレードにおいて雌雄交尾器の相対サイズも大きかった。またそういうクレードでは大型化した雌雄交尾器の無理な噛み合いによってついたと思われる交尾器の傷の頻度も高かった。雌がバルブを強く引っ込め、雄がハサミ状の交尾器でバルブを強くつかむという関係が系統を追うごとに軍拡競争的にエスカレートし、雌雄交尾器の相対サイズの増大とそれに伴う傷というコストを発生させながら急速な交尾器の形態多様化が進行していると思われる。