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[P-033]タカラガイの殻形態に見られる地理的変異:理論と実験

発表者(所属) 入江貴博・巖佐庸(九大・理・生物)
要旨 タカラガイ科(軟体動物門腹足綱)に属するCypraea caputserpentisでは、べルクマンの法則に従って、軟体部のサイズが低緯度ほど小さくなる。これとは反対に、殻は低緯度ほど厚くなる。一般にタカラガイは、まず幼殻と軟体部の体積を拡大し(幼貝期)、次に貝殻を厚くする(カルス形成期)。これらの成長の後に、繁殖が始まる。近縁種C. annulusの幼貝を同一産地から採集し、異なった水温(22, 25, 28℃)の水槽で成長させた結果、水温が高いほど幼貝期が短くなることが明らかになった。これらの結果に基づいて、本研究では最適成長スケジュールを計算する数理モデルによって、上述の緯度クラインを説明する。生涯繁殖成功を最大とするような幼貝期の長さとカルス形成期の長さを計算した結果、低緯度ほど幼貝期が短い、幼貝サイズが小さい、カルスが厚いというすべての勾配を説明する環境要因は、捕食圧のみであることが明らかになった。



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