[P-034]哺乳類の中耳骨の進化の分子的背景を探る研究
発表者(所属) 中澤真澄、倉谷滋 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター、形態進化研究チーム 要旨 比較形態学的知見より哺乳類の中耳骨のうちキヌタ骨とツチ骨は、祖先的羊膜類から哺乳類が分岐する過程で、顎関節から変化したと考えられている。我々は哺乳類の耳小骨が生まれた背景を、分子発生学的レベルで明らかにすることを目的に研究を進めている。哺乳類と他の羊膜類では鼓膜に別の骨が接することから、我々はこれが進化上の新規形成物と考え、まずマウスとニワトリの鼓膜の発生過程の比較観察を行った。その結果、発生途中では相同な形態をとりながら、マウスの第1咽頭溝の貫入はニワトリよりも前方、かつ下側に進行し、その位置関係から鳥類の下顎腔が哺乳類の耳管と相同である可能性が示唆された。またgoosecoid、HoxA2の発現領域を比較したところ、由来する細胞系譜の特質は残したまま、位置関係のみが変わっていることがわかった。現在マウスーニワトリ間での移植による解析をすすめており、この結果についても報告する。