[P-035]遺伝子の数は細胞分化状態の多様性を増加させない
発表者(所属) 望月敦史(基礎生物学研究所・情報生物学研究センター) 要旨 遺伝子の発現は、転写調節因子のそれぞれが存在するか否かによって厳密に調節されている。特に体制の複雑さ、分化状態の多様性は、多数の遺伝子が発生過程において相互作用する結果、実現されると考えられている。 遺伝子ネットワークを一般的に扱える常微分方程式モデルを考え、解析した。各遺伝子の発現レベルによって多数の状態があるが、それぞれに対して遺伝子が発現を切り替えできるとした。複雑なネットワークの解析は困難だが、今回主要な平衡状態を予測し、その数の期待値を厳密解として得ることができた。 次のような意外な結果を得た。(1)平衡状態(分化状態)の数は遺伝子数に依存しない。(2)一つの遺伝子に作用する他の遺伝子の数にも依存しない。むしろ(3)平衡状態の数は自分自身を転写調節する遺伝子の数によって増加する、と分かった。つまり、進化の過程で遺伝子数が増加することは、体制の複雑化の直接の原因ではない。