要旨 |
遺伝子ネットワークなどの大規模で複雑なネットワークは、特徴的なトポロジーを持つことが報告されており、これらのトポロジーは、小数の要素に多数の辺が結合するが、大多数の要素は少数の辺が結合しており、結合度に不均一さを持っている。ブーリアンネットワーク(BN)は、制御遺伝子ネットワークの離散力学モデルであり、その標準モデルは、入力結合度 K を持つ N 個の要素で構成され、要素間をNK 本の有向辺でランダムに結合したものである。しかし、その結合度は上記のものと異なる。そこで本研究では、文献に基づいたトポロジー情報をBNに導入することにより、BNの力学的性質に対するトポロジーの効果を調べた。まず文献より大腸菌の入力結合度(K=2)と出力結合度分布を求めた。出力結合度に関して降順に並べて順位をつけると、その順位-結合度分布はべき乗分布を示した。標準モデルによる出力結合度の順位-結合度分布は、指数分布を示した。さらに比較のために、均一な分布、べき乗分布よりさらに不均一な分布の計4種のトポロジーをBNに適用した。BNの力学的な性質は、要素数 N やトポロジーに依存して変化した。より均一なトポロジーを持つネットワークは、より長くて多くのアトラクタを示すと同時に、より低い時系列パターンの同期性を示した。より不均一なトポロジーを持つネットワークは、逆の性質を示した。大腸菌由来のトポロジーは、4種の中間の不均一さを持ち、中間の力学的な性質を示した。これらの結果は、ネットワークのトポロジーと力学的な性質の間にトレードオフが存在するのと同時にネットワークの設計原理を示唆する。
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