[P-046]メダカの性的二型の緯度間変異に与える遺伝および環境の影響について
発表者(所属) 滝沢壮治・山平寿智(新潟大学大学院自然科学研究科) 要旨 性的二型の変異は性淘汰の強さの変異を反映するとしばしば仮定されるが,果たしてそうだろうか?メダカでは尻鰭の形態に性的二型が見られ,雄は成熟に伴い尻鰭が伸長する.緯度の異なる集団から採集した野生個体の尻鰭を比較したところ,低緯度ほど性的二型の程度が大きいことがわかった:雌の尻鰭は緯度間で差が無い一方,雄は低緯度の個体ほど尻鰭が長かった.また,室内共通環境実験の結果,どの水温のもとでも低緯度の雄ほど尻鰭が長く,性的二型の緯度間変異には遺伝的基礎があることが明らかになった.これは,低緯度ほど性淘汰が強いことを示唆する.しかし,どの集団も高温で発生させた雄ほど尻鰭が長く,性的二型は水温により可塑的に変化することもわかった.これは,緯度という水温環境の勾配に沿って,性的二型に与える遺伝と環境の影響が正の共分散関係にあり,野外における性的二型の変異からは性淘汰の強さの変異が過大評価されることを示す.