[P-061]サケ・マスの姉妹群はカワカマスである:ミトコンドリア全ゲノム解析に基づく原棘鰭類の系統関係
発表者(所属) 石黒直哉(東大海洋研)・宮 正樹(千葉中央博)・西田 睦(東大海洋研) 要旨 サケ・マスは真骨魚類の原始的一群である原棘鰭類に属している.原棘鰭類にはこの他カワカマス類やキュウリウオ類など進化学的に関心の高い分類群が多く含まれているため,主に形態形質に基づく系統解明が試みられてきたが,明確な結果が得られていない.そのため,サケ類の姉妹群が何であるかも諸説入り乱れていたが,近年の研究では,サケ類と同じく遡河回遊の生活史を持つ魚類を多く含むキュウリウオ類が姉妹群であるとする傾向にある.本研究では,原棘鰭類の主要5分類群から2種以上を選定し,そのミトコンドリアゲノムの全塩基配列を決定し系統解析を行った.その結果,主に北極域に生息する淡水魚であるカワカマス類がサケ類の姉妹群となり,キュウリウオ類とは系統的に遠縁であることが明らかになった.サケ・マスの浸透圧調節に関与する遺伝子などの研究において比較対象とするのは姉妹群であるカワカマス類にするべきである.