[P-066]イオンポンプの進化が語る真核生物の起源:古細菌P-type ATPaseのサブファミリー分布はメタン生成古細菌と真核生物の近縁性を示唆する
発表者(所属) 岡村英幸1、出縄政嗣2、大庭良介2、川合進二朗1、竹安邦夫2 (1大阪歯科大学 生物学教室、2京都大学 生命科学研究科) 要旨 ゲノム解読の完了した16種の古細菌総てのP型ATPase ORF、全41個を既知の真正細菌、真核生物の配列と共に系統解析した結果、古細菌ORFの中には真核生物特有とされてきたサブファミリー、タイプ2C(動物Na+/K+ポンプ型)とタイプ3A(植物細胞膜H+ポンプ型)に属するものが存在することが判った。更にそれぞれの詳細な系統解析の結果、メタン生成古細菌が真核生物に近縁であり、特にタイプ2CではMethanosarcina属が動物の姉妹群となった。真核生物の起源に関する仮説には、始原の真核細胞自体が複数の原核生物の融合により生じたとするキメラ説があるが、本研究の結果はメタン生成古細菌と真核生物の類縁関係を示唆し、1998年にMoreiraとLopezGarciaの唱えたキメラ説の一つ、種間水素転移共生説と符号が合う。併せて真核生物がキメラ的に多系統である可能性についても考察する。