要旨 |
ゲノムの全塩基配列が決定されたパン酵母S. cerevisiaeが含まれるSaccharomyces属酵母には全部で23の種が記載されている。演者らはS. cerevisiaeを対照として、属内において系統的に距離のあるS. naganishiiを用いて、性的隔離の実体と性分化遺伝子の進化を種形成の立場から解析している。
Saccharomyces属酵母ではa型とalpha型に性が分化しており、それぞれが分泌するa型とalpha型の性フェロモンにより接合過程が調節されている。S. cerevisiaeとS. naganishiiの種間では接合が起こらないが、両種のalphaフェロモンは種を越えて交叉活性を示す。
本研究では性的細胞認識を支配する性分化遺伝子の進化を明らかにする目的で、S. naganishiiからalphaフェロモン遺伝子を単離し、S. cerevisiaeのそれとの比較解析を行った。ここで遺伝子を上流調節領域(URS)とコード領域(CDS)の二つの領域に区分し、URSとCDSのそれぞれについて独立に異種細胞内での機能的挙動を検定した。その結果、URSには種特異的な調節シス配列が存在することがわかった。
|