[P-073]大腸菌と細胞性粘菌による人工共生系の形成:大腸菌全遺伝子発現量の網羅的解析
発表者(所属) 松山晋一(阪大院・情報)・古澤力(理研・ 発生再生総合研究センター)等々力政彦(阪大院・工)卜部格(阪大院・工)・四方哲也(阪大院・工,阪大院・情報科学,阪大院・生命機能,東大院・総合文化,科技団・さきがけ研究21) 要旨 大腸菌と細胞性粘菌は捕食者-被食者の関係にあり、通常両者を共培養すると粘菌アメーバは大腸菌を食べ尽くし、飢餓状態となる。ところが、この二種の生物を最小培地上で2週間から1ヶ月間共培養すると、表現型のまったく異なる粘性の大腸菌コロニーが現れ、これと粘菌アメーバが長期間に渡って安定的な系を確立することがわかった。本大会では、粘菌との共存を経験していない大腸菌と、粘菌と安定的に共存した大腸菌とのあいだの遺伝子ネットワークの変化を比較するため、GeneChipを用いて大腸菌全遺伝子の発現パターンを比較した。その結果、粘菌と共存した大腸菌では解糖系、TCAサイクル等のエネルギー代謝に関わる遺伝子群、蛋白質の翻訳に関わる遺伝子群等の発現が減少しており、逆に細胞外多糖類の合成に関わる遺伝子等の増加がみられた。また、ストレス応答に関わる遺伝子群の発現が共存した大腸菌では減少していることもあきらかになった。