[P-091]リストラされない偽遺伝子:ブダイ科魚類のミトゲノムにおける tRNA 偽遺伝子の進化
発表者(所属) 馬渕浩司 (東大海洋研)・宮正樹 (千葉中央博)・佐藤崇 (東大海洋研)・M. W. Westneat (Field Museum of Natural History)・西田 睦(東大海洋研) 要旨 脊椎動物のミトコンドリアゲノム (ミトゲノム) は非常にコンパクトに構成されており,遺伝子や調節領域など何らかの機能を持つ領域が,ほとんど隙間なく配列している.遺伝子に重複が起きた場合には,偽遺伝子化した配列は速やかに脱落し,無駄な部分は早急に取り除かれる.以上のような一般的な傾向に反して,少なくとも 1 千万年以上にわたって維持されていると考えられる tRNA-Met の偽遺伝子が,ブダイ科魚類のミトゲノムにおいて発見された.この tRNA 偽遺伝子は,タンパク質の ND2 遺伝子の 5' 末端に接し,かつクロバー葉型二次構造の“上半分”を維持していることから, ND2 遺伝子の mRNA がミトゲノムの一次転写産物から正しく切り出されるための“punctuation mark”として働いていると推察された.この偽遺伝子は,このような機能的な役割を担うことで,ミトゲノムからの“リストラ”を免れていると考えられた.