要旨 |
Macrophya apicalisとM. infumataはクロハバチ属内の近縁種である。M. apicalisは九州、四国、本州、北海道に分布する。一方、M. infumataは中国北部、韓国、ロシア沿海州、本州亜高山帯、北海道に分布する。この二種はスイカズラ科植物ニワトコSambucus Sieboldian を寄主植物とし、羽化も同時期である。二種の分布域は本州亜高山帯と北海道全域で重複している。現在までに報告されているハバチの同所的種分化は寄主転換や羽化時期のずれを障壁として生じている。我々はミトコンドリアDNA cytochrome oxydase Iを用いて二種の遺伝的距離を調べた。我々は重複分布域、単独分布域からM. apicalos 33個体、M. infumata 23個体を採集した。その結果、二種間に10%の変異がみられた。これは二種の種分化は昔に終わっており重複分布域は二種の分布域の再会合と考えられる。遺伝的変異は種内でも存在しており、M. apicalosは北海道、本州、九州の参集団を形成した。一方、日本のM. infumataは一つの集団を形成した。これはM. infumataが近年、日本に流入したことを示唆する。
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