[P-103]細胞内共生細菌ボルバキアに感染する新規バクテリオファージの同定と解析
発表者(所属) 藤井由紀子(東大・院理・生物科学) 要旨 ボルバキア属の細菌は多くの昆虫や節足動物に感染している細胞内共生細菌である。ボルバキアは宿主の性と生殖に干渉して,産雌性単為生殖・遺伝的雄の機能的雌への性転換・雄殺し・細胞質不和合(雄の不稔化)など,さまざまな生殖異常を引き起こすが,その分子機構は不明である。我々は,ボルバキアに感染する新規バクテリオファージを単離・同定した。ゲノム解析の結果,感染・複製に必要と考えられる遺伝子群や,ボルバキアが昆虫細胞内に分泌している可能性のあるいくつかの機能未知遺伝子を発見した。また,同一宿主に感染していた2系統のボルバキアから,遺伝的タイプの相同なファージ粒子が検出されたことから,これら2系統のボルバキア間で,ファージが水平感染していたことが示唆される。多様な宿主昆虫に感染して分布を拡大してきたボルバキアの形質獲得に,ファージが深く関わっていた可能性について考察する。