[P-112]細胞内共生菌の進化速度上昇に伴う非同義置換パターンの変化
発表者(所属) 武田淳一、伊藤剛、今西規、五條堀孝(生物情報解析研究センター) 要旨 ブフネラはアリマキの体内でのみ生存可能な共生細菌であり、近縁種だが単独で生存する大腸菌とは約2億年前に分岐したと考えられている。このような共生または寄生細菌の特徴は、必要のない遺伝子の消失によるゲノムの縮小化や、GC含量率の低下などである。さらに、ブフネラと大腸菌のオーソログである89個の遺伝子を用いた研究により、ブフネラの進化速度は大腸菌の約2倍であることが報告されている。今回、同様の遺伝子セットを用いて、非同義置換においてブフネラと大腸菌それぞれの系統でアミノ酸の性質がどれほど変化したのかを、Granthamのマトリックスによる分類を用いて導出した。その結果、比較的保守的な変化が進化速度上昇に大きく寄与しているものの、性質の大きく異なるアミノ酸置換にも大幅な増加が見られた。これは、大部分は中立であるが、部分的に負の自然選択の緩和や弱有害変異の固定があることを示唆している。