[P-119]履歴が生み出す新規に獲得した遺伝子に対する浸透度の違い
発表者(所属) 鈴木誉保1、柏木明子1、森光太郎2、卜部格1、四方哲也1,2,3,4,5 (1阪大・工、2阪大・情報、3阪大・生命機能、4東大・総合文化、5JST) 要旨 表現型は、遺伝子型と生物が生育している環境とによって決まると考えられている。一方、どのような環境で生きてきたかという履歴によって影響を受けることも知られている。本研究では、履歴の違いが、ある遺伝子型をもった個体のうち表現型として現れてくる個体の頻度(浸透度)に影響するかどうかを調べた。グルタミン合成酵素(GS)遺伝子を欠損した大腸菌を異なる二つの環境いずれかで培養したのち、GS遺伝子をコードしたプラスミドで形質転換した。これらの形質転換体を平板培養することでGS遺伝子に対する浸透度を得た。その結果、GS遺伝子は、履歴の違いによって異なる浸透度を示すということがわかった。こうしたことより、進化の過程において、たとえ変異がランダムに生じたとしても、履歴の違いがその遺伝子型が表現型として表れてくる過程(浸透過程)に影響をおよぼし、表現型の分布に偏りを生じさせる可能性が示唆された。