[P-120]放散虫の化石記録に残された遺伝子の水平伝播
発表者(所属) 松岡 篤(新潟大学・理・地質) 要旨 放散虫の進化をみると系統の異なるグループで類似した形質が平行的に発達する例が認められる.ジュラ紀新世から白亜紀古世にいくつもの属に殻の対称性を崩すような付属物が形成される現象がみられる.典型的な例は,Pantanellium属から派生したVallupus類がもつcortical collarとよばれる形質である.同様なcollar状の形質は,Archaeospongoprunum属,Emiluvia属,Acaeniotyle属など,相互に系統関係の薄い諸属に発達している.この現象は,cortical collarの形成にかかわる遺伝子が,他の生物によって系統の異なる放散虫にもちこまれ,似た形態形質の発現をもたらしたとみることができる.また,Vallupus類は低緯度表層水に適応した放散虫であると考えられているが,これは遺伝子を運搬した生物の分布特性によるものかもしれない.