[P-121]ミトコンドリアDNAから推測された後期更新世のカヤネズミの旧北区への放散
発表者(所属) 安田俊平1、Peter Vogel2、土屋公幸3、鈴木仁1 (1北海道大学大学院地球環境科学研究科、2Batiment de Biologie Universite de Lausanne、3東京農業大学農学部) 要旨 カヤネズミ(Micromys minutus)は、旧北区の温帯域に棲む小型哺乳類の中でも、分布域が日本からイギリスまでと非常に広く、また、その生態は草原に棲むことに特化しており、過去の気候変動や陸橋形成時代の推定などの生物地理学的解析に非常に有用な種である。今回の研究では、アジアとヨーロッパから集められたカヤネズミのミトコンドリアゲノム中のチトクロームb遺伝子の解析を行った。その結果、ロシア極東地域の系統がまず最初に分岐し、その後、ヨーロッパ系統と韓国・日本系統への分岐が起こったことが確認された。また、同じネズミ亜科に属するアカネズミ属の進化速度を対応させると、それぞれの分岐年代は約30万年前と7万年前であり、また、ヨーロッパ集団、韓国・日本集団それぞれの拡散時期が約5万年前と3万年前であった。この結果より、本種は東アジアが起源であり、ここ10万年以内にヨーロッパに進出したこと、最終氷期に日本に進出したことがそれぞれ示唆された。