[P-123]有柄棘皮動物ニッポンウミシダにおける茎の形成とBrachyuryおよびFoxA2の発現パターン解析
発表者(所属) 佐藤敦子1、日比野拓2、原祐子2、中野裕昭1、雨宮昭南1,2、西野敦雄1 (1東大・新領域・先端生命、2東大・院理・生物科学) 要旨 脊索の起源については、棘皮動物有柄類の茎が脊索動物の中軸器官に相当するという説など、未検証の仮説が多く残されている。本研究は、新口動物の共通祖先に脊索を中心とした中軸器官が存在し、棘皮動物にも保存されている可能性を検証することを目的とした。そこで、棘皮動物の中でも祖先的とされる現生有柄類のうちニッポンウミシダを用い、茎の形成過程を調べ、脊索動物の脊索形成過程で重要な遺伝子であるBrachyuryと FoxA2の発現パターンを解析した。両遺伝子の発現は茎には見られず、また脊索動物の予定脊索領域で見られるような同所的な発現も示さなかった。今回の報告は有柄類の茎と脊索動物の中軸器官との相同性についての形態学上の仮説に対する初めての分子発生学的なアプローチである。得られた結果を交え、謎の多い新口動物の体制の進化、特に脊索動物における中軸器官の進化と他の新口動物の独特な体制の進化について議論したい。