[P-126]カメの甲は既存の遺伝子のco-optionによってもたらされたのか
発表者(所属) 工樂樹洋1,2、薄田亮1、倉谷滋1(1理研CDB・形態進化、2京都大院理・生物物理) 要旨 我々は、進化的新規形質であるカメの甲の獲得を可能にした発生メカニズムを探っている。他の羊膜類と異なり、カメの胚発生では、後期咽頭胚に甲稜(carapacial ridge)が形成され、その甲稜の存在する側方に肋骨が伸長する。我々はMegasort法により、スッポンの甲稜特異的遺伝子の網羅的探索を行い、リアルタイムPCRおよび in situ ハイブリダイゼーションにより候補遺伝子の発現特異性を評価した結果、4つの甲稜特異的遺伝子を同定した。カメ以外の羊膜類にもこれらの遺伝子のオーソログが存在するにもかかわらず、その発現パターンは、ニワトリやマウスでは見られないカメ独特のものであった。これは、すでに羊膜類の共通祖先の時点で存在した遺伝子に対し、カメ類が鳥類や他の爬虫類と分岐したあと、カメ類の系統において発現部位の二次的な変更が起きたことを示唆している。現在、これらの遺伝子の発現部位の変化がカメの甲の獲得に関与した可能性を検討している。