[P-131]完全ゲノム配列の比較解析から示されたコリネ属細菌の進化
発表者(所属) 中村洋路(遺伝研)、西尾陽介(味の素)、池尾一穂(遺伝研)、五條堀孝(遺伝研、JBIRC) 要旨 昨年末、コリネ型細菌Corynebacterium efficiensの完全ゲノム配列が決定・公開された。この細菌はグラム陽性菌の中でも高いGC含量を持つグループに属し、様々なアミノ酸を作ることのできる産業上有用な菌として知られる。今回我々は、この菌のゲノム構造を、近縁種であるC. glutamicumやC. diphtheriaeのゲノムと比較した。すると、これら3つのコリネ菌のオルソログ遺伝子の並びは非常によく保存されており、進化の過程で大規模なゲノム再配置をほとんど起こしていないことが分かった。特に、C. efficiensやC. glutamicumは自由生活細菌であるが、こうした細菌でゲノム構造が安定に保たれていた例は今まで報告されておらず、今回が最初の報告となる。次に我々は、ゲノム再配置を引き起こさない要因の一つとして染色体組換え機構に着目し、上記のコリネ菌で組換えに関与する遺伝子の有無を調べた。その結果、RecBCDによる組換え経路が存在しないことがコリネ菌ゲノムの安定性に寄与している可能性が示唆された。