種別 シンポジウム 世話人 西 弘嗣(九州大学大学院比較社会文化研究院) 趣旨 地球の大気や海洋システムの変化に応じて,地球の生物系がどのように変化していったかを地球史を通して概観する.また,逆に地球史の中で大気や海洋のシステムを生物が変革させていった事件も取り上げて,生物と地球の共進化を総合的に考察する. 講演予定者は5〜6人 予定講演者の氏名、所属、タイトル
現在の海洋での一次生産は植物性プランクトンが担っているとされる.過去に存在し た多くの基礎生産者の化石記録は失われたが,原生代以降ではアクリタークや渦鞭毛 藻シストの残存性が目立つ.アクリタークは所属不明の単細胞様微化石の総称で人為 的分類群である.形態学的特徴から.アクリタークは生活史の一時期に休眠期を必要 とする真核生物の独立栄養性プランクトンを主とすると考えられ,とすれば沿岸性で あった.渦鞭毛藻出現以前はアクリタークが沿岸域での一次生産者であった.アク リタークの種多様性がパンゲア形成のあった石炭紀に低下したことは,巨大大陸の 出現によって多様な沿岸域が消失した可能性を示唆する.その後,パンゲアが分裂し て沿岸域の環境多様性が回復した三畳紀後期からジュラ紀前期に現生型の渦鞭毛藻が 出現した.植物性プランクトンの進化は海洋環境の変化と深く結びついている.
海洋の物質循環は,海洋表層で光合成生物が生産する有機物がマリンスノーとなって沈降し, 海底に堆積するまでの一連の生産・消費・分解・リサイクルの過程として理解されている。 また,海洋表層の生物生産量と質が変化すると海底にも沈降するマリンスノーの量と質の 変化として現れることから,benthic-pelagic couplingが成り立っている。海洋の物質 循環過程にはさまざまな生物がさまざまな段階で関与している。地球史を概観すると海洋 生物は時代と共に多様になり,進化してきた。このことは,海洋の物質循環に関与する 生物が入れ替わってきたことを示しており,物質循環そのものの質も大きく変化してき たはずである。本講演では,地球史を通じて海洋の物質循環がどのように変化してきた のかを海洋生物の進化と絡めながら説明し,Benthic-pelagic coupling の進化について 議論する。
顕生代の海洋では,プレート運動を駆動力とする海洋底拡大の速度変化と,それに伴う海嶺 での熱水循環量の変化により,海水のイオン強度,Mg/Ca比などが億年単位で変動してきた とされる.この量的な変化は,海洋から無機的に沈殿しやすい炭酸カルシウムのタイプの違い, つまり結晶構造の異なるカルサイト(方解石)とアラゴナイト(霰石),という質的な違いに 帰結し,地球海洋はその両者を行き来するという変遷をたどってきた(現在はアラゴナイト海) .一方,数多くの海洋生物は炭酸塩,リン酸塩,シリカなどの生体鉱物を沈着することが知ら れ,最も普通に見られるのは,貝殻,サンゴ,ココリスなど炭酸カルシウムから構成される骨 格である.生物が炭酸カルシウムのどちらの結晶形を作るかは分類群によって決まっており, その形成制御機構が遺伝的に固定されていることを示唆する.本講演では,この海洋組成変遷 と骨格形成進化の関連について議論する.
One of the most important symbioses in marine environments can be found between the single celled foraminifera and different groups of microalgae. In nutrient depleted tropical seas, most planktic foraminifera house symbionts, while benthic foraminifera develop large tests. The main reason for symbiosis seems to provide the symbiotic microalgae with nutrients and CO2, both rare in warm water. While all larger foraminiferal species with hyaline, transparent tests walls consisting of low-magnesium calcite houzoic to dinoflagellates for symbionts. The fourth group of larger porcellaneous foraminifera (Alveolinidae), not closely related to the former families, house diatoms similar to its rivals, the hyaline larger foraminifera. These differences can be explained by ocean water conditions, where rises in temperature (bleaching), CO2 (bleaching) and nutrient content (green algae) support or hinder symbiosis. Therefore, the dominance of larger foraminiferal groups allows interpretation of paleo-oceanographic conditions in shallow water environments according to the three factors described above.