種別 ワークショップ 提案者 久原哲(九大大学院農学研究院) 趣旨 既に100種を超える生物のゲノム構造が明らかにされ、さらに400種を超えるゲノム構造解明が進行している現状をふまえ、ゲノムの機能・進化の解析におけるバイオインフォマティクスの重要性は今まで以上に重要となってきている。機能・進化解析の基礎となる遺伝子配列データベースから解析ツール、今後の解析の基盤となる分子間相互作用データから細胞シミュレーションにいたるひろい分野の基盤技術となっているのがバイオインフォマティクスである。本シンポジウムでは、比較ゲノムにおけるバイオインフォマティクスの基盤技術とそれを用いた比較ゲノムを中心として、ゲノム比較を意識して研究をおこない始めた研究者の方々に講演をお願いし、「バイオインフォマティクスからのゲノム機能・進化の解析」の方向性を議論する。 予定講演者の氏名、所属、タイトル
- 「ゲノムデータベースに基づく比較ゲノム解析」
内山郁夫(基礎生物学研究所)多様なゲノム配列が蓄積しつつある現在、比較ゲノム解析はゲノムの機能や進化を考える上で重要なアプローチとなっている。比較ゲノム解析には遺伝子構成の比較、ゲノム構造の比較、個々の遺伝子構造の比較など、いくつかの視点があり得るが、いずれにしてもまずオーソログの対応付けを行うことが不可欠である。ゲノム間のオーソログ対応付けには、これまでホモロジー検索のベストヒットに基づく方法がよく用いられてきたが、多数のゲノムを同時に対応づけるには多くの問題を抱えている。これを克服するため、人手で修正を加えた分類データベースが作成され、広く用いられているが、決定されたゲノム数が数百種類へと拡大していく中で、このようなアプローチにも限界があると考えられる。発表者は、これまで、大量のゲノムデータから自動的にオーソログ分類を構築する効率的な手法の開発に取り組んできているので、紹介したい。- 「ゲノムデータベースに基づくパスウェイ解析」
五斗 進 (京都大学化学研究所 バイオインフォマティクスセンター)現在、様々な生物種でゲノム解析が進行しているがゲノム決定後の機能予測が正確にできているかどうかを判断する手段の一つとしてパスウェイデータベースを利用することがある。各遺伝子の機能をアノテーションした後そのアノテーションに基づいてパスウェイ(特に代謝系)の再構築を行うのである。さらに、最近ではパスウェイの進化を議論する方法として様々な情報をパスウェイ上にマッピングしてその分布を調べるという方法も取られる。本発表では、我々が開発しているKEGG/PATHWAYにおいてゲノムデータをもとにパスウェイ解析を行う方法を紹介し、ゲノムデータからのパスウェイ再構築や系統プロファイルに基づくパスウェイ解析に応用した例について紹介する。- 「マイクロアレイデータからのネットワーク解析」
久原 哲(九州大学大学院農学研究院)ゲノムプロジェクトの進展、及び、DNAチップ・マイクロアレイ技術の確立 は、細胞内の全遺伝子を対象としたトランスクリプトーム解析を可能にした。マ イクロアレイで代表されるDNAチップ法とは、ガラスやシリコン等の基盤の上 に多数の種類のcDNAあるいはオリゴDNAを固定し、細胞から抽出した全種 類のmRNAを蛍光色素で標識したcDNAに逆転写し、チップ上のDNAとハ イブリダイズさせ、その蛍光色素の量で網羅的な遺伝子の発現量を測定する手法 であり、1回のハイブリダイゼーションによって数万個の遺伝子発現情報を得る ことができるため、トランスクリプトーム解析において広範に利用されるように なってきた。さらに、従来からの単一の遺伝子やタンパク質の解析を積み上げて 全体のシステムを構築するボトムアップ法とは異なるトップダウン方式のシステ ム論的なアプローチを用いた網羅的な遺伝子発現制御のネットワーク構築を可能 にしている。- 「比較ゲノム解析に基づくゲノム進化研究 - 大祖先からヒトへ」
渡辺日出海(奈良先端科学技術大学院大学)