[P-146]ポリオウイルスは根絶できるのか --- 確率論的進化疫学モデルか
発表者(所属) 佐々木顕、原口佳大(九州大学理学部)、吉田弘(国立感染症センター) 要旨 ポリオウイルスの制圧に使われている生ワクチン(OPV)は、一方で毒性復帰突然変異株の供給源でもあり、実際ワクチン由来株の散発的な流行が世界各地で起きている。これが大流行にいたらないのは、強毒復帰株を供給した当の生ワクチンによる集団免疫のおかげである --- つまり生ワクチンは諸刃の刃あるいはマッチポンプとしての側面を持っている。WHOはここ数年以内にポリオを全世界的に根絶する目標を掲げている。この目的が達成され発症例の報告がなくなり、ワクチン接種が停止された瞬間から、人類は未曾有宇の危険な賭けにでることになる。ワクチン接種停止により集団免疫が低下すると、ワクチン由来株流行の条件が整うのである。集団を循環するワクチン株の絶滅が先か、強毒復帰株の流行に火がつくのが先かを確率論的疫学モデルで評価すると、深刻な事態が予測される結果となった。