要旨 |
宿主と病原体など敵対的な相互作用のもとで共進化する系で、どのような種内変異構造、群集構造、種間関係ネットワークが進化するかというテーマについての最近の理論的知見を紹介する。
植物への病原菌の感染と防御のメカニズムは、遺伝子=遺伝子相互作用(植物の抵抗性遺伝子と病原菌の毒性遺伝子の組み合わせによって品種・系統間の親和関係が決まるシステム)に基づいており、多数の抵抗遺伝子と毒性遺伝子が、イネといもち病菌、コムギと赤さび病菌などの間の複雑な進化動態にかかわっていることが知られている。この遺伝子=遺伝子相互作用にもとづく共進化の特徴を多遺伝子座の数理モデルを用いて解明する。この系は、量的形質としての抵抗性と毒性の軍拡競争と共進化サイクルという振る舞いと、遺伝子型「一致」相互作用による多様化選択を同時に示す系であるのが特徴である。このモデルをもとに、どのような宿主と病原菌の遺伝子型間ネットワークが構築されるかなどを議論する。
なお、マメ科植物と根粒菌の共生系における特異性は、植物と病原菌の遺伝子=遺伝子相互作用とよく似た機構で決まっている。この共生系における特異性の進化についても理論的な検討を加えたい。
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