[P-163]遺伝マーカーで探る地史的イベントによる遺伝構造の形成プロセス
発表者(所属) 近藤俊明・井鷺裕司(広島大・院・国際協力) 要旨 マイクロサテライトマーカーは高度の多型,共優性等の性質から生物集団内の親子 解析に広 く用いられているが,これらの特長は種内の遺伝的交流の歴史や遺伝構造形成に関 する解析 においても有効なものである。本研究ではそのようなアプローチとして,中四国お よび九州 の一部の限定した地域に生育する水散布植物キシツツジを対象に,過去・現在の流 域構造お よび散布様式が遺伝構造の形成に及ぼした影響について解析した。キシツツジ32集 団につい て系統解析を行った結果は,現存するキシツツジ集団の遺伝構造が最終氷期終盤の 瀬戸内海 形成以前に中四国地方に存在した2つの大河の構造を反映するものであることや,現 在の遺伝 子流動が河川内に限定され,かつ方向性のあるものであることなどを示し,それら が局所的 に分布するキシツツジ個体群の遺伝構造の形成や種分化に主要な役割を果たしたこ とが明ら かとなった。