[P-164]性フェロモンを介した蛾類の配偶行動システム
発表者(所属) 中 秀司 (農環研・昆虫研究グループ) 要旨 蛾類の多くは、雌性フェロモンの放出とそれに呼応する雄の行動連鎖で配偶行動が成立している。多くの場合、蛾類の雌性フェロモン構成物は[炭化水素+官能基]で構成され、系統的に近い種同士は、非常に似通ったあるいは同じ構造の化合物群で性フェロモンを構成している(Arn et al., 1992, 1997)。Butenandt et al.(1961)による性フェロモンの発見以降、蛾類の配偶行動は、常に嗅覚刺激が主軸に置かれている。近縁種間の生殖隔離機構は、主に雌性フェロモン構成物の成分比、あるいは配偶行動が誘起される時間帯や食草の相違などによって語られてきた(e.g. Lofstedt et al., 1991)。演者は代表的な昼行性蛾類のスカシバガ科の配偶行動解析を進め、注目すべきいくつかの知見を得た。本講演では、蛾類の配偶行動について、近似種間の生殖隔離機構、フェロモン成分とその応答の進化に関する代表的な研究と共に、演者の研究からいくつかの興味深い例を紹介し、蛾類の配偶行動システムの進化について考察したい。