高校生ポスターセッション
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HP-2
非木材成分へのヤマトシロアリの穿孔
深井要1
1東京大学教育学部附属中等教育学校
森林で朽木を食べて生活するヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)は、木材を食べる建築物の害虫として知られる。私は、鉄筋コンクリートの建物から飛び立つヤマトシロアリの羽アリを野外で観察し、木材以外にも穿孔することが可能なのではないかと思い、これを検証することにした。実験方法として、セルロースだけの試験管と寒天とセルロースが入った試験管の二種類を用意し、一定期間でシロアリが底まで到達した割合を比較した。
その結果、寒天層が厚くなると、底まで到達する割合が減少する傾向が見られた。一方で、寒天層にも穿孔の跡が見られ、一部では寒天層を貫通し底面まで到達していた。これは、シロアリは木材成分以外も穿孔することを示している。また、木材成分以外の穿孔は、木材成分の穿孔と比較して活発ではなくなる可能性が示唆された。今後は、穿孔行動の差が、シロアリが木材成分を認識した結果であるか否かを明らかにしたい。
HP-3
ベタの威嚇行動フレアリングを引き起こす鍵刺激の探索
多田美羽1
1東京大学教育学部附属中等教育学校
タイのメコン川が原産の熱帯魚ベタ(Betta splendens)は闘魚とも呼ばれ、オスは非常に縄張り意識が強い。ベタのオスは、自らの縄張りに他個体のオスが侵入した際、噛みつき合いの闘争をする前に、全身のヒレとエラを広げ体を震わせるフレアリングという威嚇行動を行う。私はベタが何を認識しフレアリングを行うのか疑問に思い、ベタに様々な対象物を見せてフレアリング回数を比較し、鍵となる刺激を調べた。その結果、ヒレなどの細かな動きや、ベタの顔がフレアリング誘導の鍵刺激となり得ることが示唆された。さらに、動きとヒレはフレアリングを誘導するのに必須となる刺激ではない可能性が示唆された。次に、顔認識において顔のどの部分が重要かを調べるため、顔の写真、顔の模式図、楕円を見せて実験した。結果、写真と模式図は楕円よりフレアリングを有意に誘導し、写真と模式図には有意差はなかったことから、顔認識には顔のパーツが重要である可能性が示唆された。
HP-4
植物の根の緑化現象
河野百羽1
1東京大学教育学部附属中等教育学校
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)では、地上部が失われた際に、根において葉緑体が発達する緑化現象が起こることが知られている。私は試験管に寒天培地を作成し、シロツメクサ(Trifolium repens)を種子から生育した際、根に光が当たり続けると地上部が失われていなくても緑化が起きることを発見した。そこで、光と根の緑化現象の因果関係に興味を持ち、実験を行った。
その結果、シロツメクサの根では茎や葉などの地上部が失われていなくても、光が照射されることで緑化が起き、分裂後の細胞でも緑化が起きる可能性が示唆された。さらに、先行研究のシロイヌナズナを用いた実験と同様の実験をシロツメクサに対しても行った。また、光の照射によりシロツメクサの根が緑化する現象がシロイヌナズナでも再現されるか確認した。その結果、シロツメクサとシロイヌナズナのそれぞれの根における緑化現象の要因は特異的なことである可能性があることが示唆された。
HP-5
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HP-6
形態分析vs分子系統解析―スミレ属の分類検討―
西村 悠生1, 池邉 智也1, 穂波 佑成1, 植田 彩花1, 山本 柚葉1
1兵庫県立小野高等学校
新しい図鑑,改訂新版『日本の野生植物』平凡社(2016)はAPGⅢ被子植物分類体系をもとに編纂され,従来の植物図鑑と様変わりしている。
私たちスミレ班は,形態的に大変よく似通っており,分類が難しいスミレ属を対象に分子系統解析を行ってきた。その中でコミヤマスミレ,マルバスミレについて,葉緑体DNAのmatK領域,trnL-F領域で,形態分類とまったく異なった結果が明らかとなった。また,コミヤマスミレに形態的に似ているとされるオリヅルスミレ,同じウラジロスミレ節のオキナワスミレ,シマジリスミレについても分析を行ったが,この節でも従来の分類と違った結果が得られている。
そこで,私たちはスミレ属の分類は分子系統解析を用いると形態的特徴による従来の分類方法とどう異なるのか,フィールドで分布を調べ,サンプリングし,葉緑体DNAだけでなく,核DNAのITS領域の分析も行い,スミレ属全体について見直しを行っている。現在の結果を報告したい。
HP-7
マガーク効果における視覚と聴覚の知覚のゆらぎ
藤木泉1
1東京都立国分寺高校
マガーク効果によって音声知覚が視覚情報によって変化する現象が見られる。例えば、バの音声にガの口の動きを合成するとダのように知覚される現象である。本研究ではこの現象を私が制作した動画においても再現できるのかを検証した。バ、パ、マの音声に、それぞれ一致した口の動きと、矛盾した口の動きの映像(ガ、カ、ナ)を合成した。健常者24人と聴覚障碍者1人に6つの動画の聞こえ方とどの程度はっきりと聞こえたかを評価してもらった。一致刺激に対して矛盾刺激の方がいずれも正答率が低かったため、マガーク効果は再現されたと考えられる。同様にバ、パ、マ の音声にラ、サ、ヤの映像を合成した動画を、健常者16人と聴覚障碍者 1 人に評価してもらった。2つの実験で健常者と聴覚障碍者の回答を比較した。聴覚障碍者は日常的に音声の明瞭性が低く,口元に注視して読唇をすることで健常者より視覚優位になると考えられた。
HP-8
おいしく食べられている蜂の子は死肉を食べる
木下裕靖1, 佐賀達矢1
1多治見高校
近年昆虫食が世界で流行っているが日本にも昔から蜂の子を食べる地域があり、現在では飼育をしてまで食べているが、その蜂は何を食べているのか調べることにした。私たちは11月上旬のシダクロスズメバチの野生巣を1つ、飼育巣は3つ(中津川市と阿南町)の幼虫の消化管内から未消化の餌生物を取り出した。なお、飼育時には鹿と鶏を与えた。餌生物のDNAを抽出し、COI領域(550bp)のDNAバーコーディング法を用いて種を特定した。得られた各生物種のリード数は元々幼虫の体内にあったDNAの比率をそのまま反映していると考え、解析を行った。野生巣の餌生物の75%がカラス、残りのほとんどをチョウ目が占め、ハクビシンや蛇もわずかに食べていた。飼育巣では与えた肉も食べていたが、半分程度は昆虫も食べていた。また、与えた肉以外の脊椎動物は食べていなかった。飼育巣では与えた肉以外の餌も狩っており、蜂は手あたり次第に狩りをしているのではないと考えられた。
HP-9
味覚と人間 「脳の疲れには甘いもの」?
藤岡桜愛1
1秋田県立横手高等学校
「脳の疲れには甘いもの」という言葉があるが、それが本当なのかについて、また本当だとしたらどのような
仕組みで起きているのかを知りたいと思い、実験と調査を行った。また、過剰な糖分摂取により肥満や甘いものの
依存症に陥る人々が世界中で増えてきているという事実を知り、心身の健康を守るためにクロスモダリティ効果を上手く
活用すればいいのではないかと考え、視覚と味覚の関係について調査した。
HP-10
ハサミムシの穴掘り行動の観察
諸角広1
1東京大学教育学部附属中等教育学校生物部
ヒゲジロハサミムシ(Gonolabis marginalis)は原始的な昆虫として知られるハサミムシ目の一種である。私は古生物に興味があったため、原始的なハサミムシに興味を持ち、学校内で見つけた本種を飼育していた。その際、飼育していたヒゲジロハサミムシのほとんどがケース内で土に潜る習性を見せたため、調べたところ、その行動についての研究がほぼなかった。そこで今回、なぜヒゲジロハサミムシがこのような行動をとるのか研究することにした。ヒゲジロハサミムシが光を嫌っているため穴を掘って光を避けていると仮説を立て、それを検証するためケース内に照明を当て続けたヒゲジロハサミムシと遮光したケース内のヒゲジロハサミムシを2周間放置しどのような穴を掘るのか実験を行った。その結果を報告する。
HP-14
セイヨウタンポポの花茎の屈曲 ~人為的な「草刈り」による影響はあるか~
齋藤舞1, 文屋萌々珂1, 菊池美沙1, 安部知里1, 今野遥1
1宮城県古川黎明高等学校
身近な環境に生育するセイヨウタンポポについて、学校の傍の公園に生えている個体と、人通りの少ない道端に生えている個体では、花茎の長さや形が大きく異なることに気づき、疑問を抱いた。公園の個体は花茎が短いものが目立ち、地面を這うように伸びているものもあった。一方 、人通りの少ない道端に生えている個体では、花茎が長く屈曲も見られなかった。公園では定期的に業者による機械を使った草刈りが行われているため、草刈りが公園に生育する個体の花茎の形態に影響しているのではないかと考えた。そこで、公園では人為的な影響により茎が短く育つ個体が多く、逆に人通りの少ない道端に咲いている個体では茎が長く育つ個体が多いという仮説を立てた。公園に咲いている個体には花茎が根元で曲がり地面と並行になって花の近くで上に曲がるという特徴を持ったものが目立つので、花茎の細胞の大きさを各部位に分け調べ、茎の曲がりとの関係性について検討している。
HP-16
回るとカラフル不思議な世界 ~ベンハムのコマを視細胞の反応で考える~
吉岡利沙1, 阿部こころ1, 須藤由宇1, 石川真誉1
1宮城県古川黎明高等学校
私たちはベンハムのコマについて研究を行っている。“ベンハムのこま”とは白と黒だけで模様が描かれただけのこまの事をいい、回すと色がついているように見える。この現象を疑問に思った私たちは、色がついて見える原因をつきとめようと考えた。先行研究で色の見え方に個人差があることが指摘されているが、具体的な数値は示されていないため、色の見え方に個人差を数値化しようと考えた。そこでベンハムのコマを実際に回し、見えている色をRGBに置き換えることで計測することにした。対象者を老若男女幅広くすることで、年齢や性別によった変化を確かめたい。また、ベンハムのコマで色が見える原因の1つとして視細胞のはたらきが指摘されている。赤錐体,緑錐体,青錐体の光に対する反応の立ち上がりのずれが関係しているという仮説をおき、黒と白が繰り返されることで色に対する反応の差が生まれ、色が知覚される一因となっていることを実験的に示したいと考えている。
HP-18
メタン生成細菌の単離を目指して ~共培養によるスクリーニングの試み~
大場友輔1, 千葉礼輝1, 菊池湊人1
1宮城県古川黎明高等学校
私たちは世界農業遺産に登録されている大崎耕土から新たなメタン生成細菌を採取、発見することを最終目標に、学校でも培養できるような培養方法の開発の研究を行う。本来、メタン生成細菌は偏性嫌気性で、高い水素分圧の元で培養されてきたが学校ではこの条件を再現できない。そこである論文で見つけた「嫌気共生培養系」を用いることで培養を学校でも行えるのではないかと考えた。嫌気共生培養系は、メタン生成細菌とある細菌が共に存在し両者の間で物質のやりとりが行われ、増殖が進んでいくものである。現在は計画中で嫌気共生培養系を用いた研究は行っていないが、確認実験としてペットボトルを用いたメタン生成を行った。ペットボトルの中に田んぼの土、野菜の生ゴミ、塩、砂糖、蒸留水を加え、その後炭酸水素ナトリウムを加えたところ、気体の発生が確認できた。それはおそらくメタン生成古細菌と考えられるが、二酸化炭素の可能性もあり今後メタンが生成された場合の確認についても考えていきたい。また、嫌気条件の再現についても考えていきたい。
HP-21
フラクトオリゴ糖は腸内細菌のバランスを調節する
金子 菜名子1, 藤野 正雪1, 矢田貝 泰輝1
1山村学園 山村国際高等学校 生物部
フラクトオリゴ糖(FOS)は、プレバイオティクスであり、腸内細菌の餌となる。プレバイオティクスとしての働きが調べられているが、体重増加を引き起こす場合もあることが分かっている。我々は、このFOSにダイエット効果があるかどうかを調べ、太った後にダイエットできたマウスの腸内細菌を調べた。次世代シーケンサー(NGS)を用いた網羅的な16S rRNA解析による菌叢解析により、同定された菌叢を比較したところ、ダイエットに成功したマウスでは、エリュシペロトリクス科細菌とラクノスピラ科細菌についての変化が分かった。エリュシペロトリクス科細菌は脂肪食で増加するが、FOSにより、その増加が有意に抑制されていた。一方で、酪酸生産菌であるラクノスピラ科細菌は、FOSにより、有意に増加していた。以上の結果から、FOSは腸内細菌の多様性を誘導することで、体重増加を抑制できることが明らかとなった。
HP-22
女子必見!肥満マウス(♂・♀)でも手作り乳酸菌チョコレートでダイエット!
稲田 未来1
1山村学園 山村国際高等学校 生物部
キーワードは、私は女子部員。生物部での私は、女子を応援する研究をしている。特に女子(私)の大好物であるチョコに乳酸菌が添加された「乳酸菌チョコ」により、マウスの体重が減少すれば、同じ哺乳動物であるヒト(若い女子)にも「ダイエット」の可能性があると考えた(仮説)。そこで昨年、「乳酸菌チョコ」をマウス(♂)に摂取させると体重が減少すると発表した。しかし審査員から、「女子必見!」ならばマウス(♀)のデータも必要だと指摘された。
そこで、この春からマウス(♂・♀)を約3ヵ月肥満させ、さらに市販品ではなく「手作り乳酸菌チョコ」で高校最後の研究に取り組んだ。
検証の結果、肥満させたマウス(♂・♀)に「手作り乳酸菌チョコ」を与えると、腸内フローラの改善(やせ菌の増加)から、マウス(♂)では-15%、またマウス(♀)でも-13%の体重減少を観察した。これならマウスと同じ哺乳動物のヒト(女子)の「ダイエット」効果にもつながると結論した。
HP-23
国産タナゴの保全に向けて
柿本 海琉,増田 圭伸1
1宮城県仙台第三高等学校
ゼニタナゴは、秋に一度だけ、ドブガイなどの大型貝に産卵し、卵は母貝内の狭いえらの中で越冬し、翌年の4~5月に浮出する。現在は外来生物や環境破壊による母貝自体の個体数の減少によって個体数が激減しており、私たちは人工産卵床と孵化装置を用いた人工繁殖の実現を目的とした。先行研究から複数の条件に加え水圧の低下が産卵行動を引き起こすことが分かっており、水圧低下状態が長い方が確実に産卵行動を誘発できるという仮説を立て、人工産卵床を設置し、3日間水圧を低下させその後水圧を戻し観察を行った。人工産卵床では稚魚が遊泳してしまい口が形成される前に餓死するということも分かっており、狭い貝のえらを再現した人工孵化装置も作成する必要があると考え、孵化装置の換水効率を食紅を用いて18か所で調べる実験を行った。結果として、産卵準備は見られたが産卵行動は観察されなかった。また,換水効率が最も良くなる位置の条件を特定した。
HP-24
サクラ類の葉における宿主と寄生生物の関係性
志村 伊織,佐々木 亮輔1
1宮城県仙台第三高等学校
一部の昆虫類は樹木の葉に産卵した卵の保護や産まれてくる幼虫のために、産卵した葉に種固有の様々な工夫を凝らし利用することが知られている。昆虫類による産卵時の葉の利用方法と宿主特異性に興味を持ち,身近なサクラ類の葉に焦点を当てた。宿主であるサクラ類の葉と寄生生物である昆虫類の宿主特異性に関する論文や研究が非常に少ない。本研究では,宿主であるサクラ類と寄生生物である昆虫類の宿主特異性とその寄生方法を明らかにすることを目的とした。
宮城県内の複数地点において,複数種のサクラ類から昆虫類が寄生した葉を採集し,樹木に対する葉表面の方位や地面からの高さなどを記録した。採取した葉については形態変化の観察を行い,寄生している昆虫種の同定・分類を行った。結果として,種に関係なく樹木に対する葉表面の方位と枝の先端付近に作られていた点が共通点として見られ,同種のサクラ類では,葉に寄生する虫が似ているものが多かった。